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住戸設計者インタビュー 藤田 ゆか里さん

コーポラティブハウスの魅力的なメリットのひとつに「自由設計」があげられます。一戸ごとに担当の設計者がつき、組合員(入居者)の要望をとりいれ、理想のすまいをつくっていくのです。
こちらでは住戸設計者のご紹介をすると共に、過去の住宅設計において、施主の要望をどう活かしたか、実例をご案内します。
 
住戸設計者 PROFILE #02
藤田 ゆか里さん
FUJITA YUKARI

藤田建築設計室
[一級建築士・一級建築施工管理技士・インテリアプランナー・インテリアコーディネーター・宅地建物取引主任者]

主な設計プロフィール
病院・住宅・ホテル・車のショールームの設計監理に関わる。

設計の仕事をしてる理由、はじめた理由
私は、住み手が心地いいもの、すまい手重視のものがつくりたいと思ったのが理由です。住宅も、ブティックで洋服を選ぶことと同じ様に身近なことにしたいと思っています。

過去手がけた作品のなかで思い出深い作品
私はホテルの設計も手がけたことがあるのですが、その時、ホテルと住居は「似て、非なるもの」と深く感じました。ホテルの考え方のベースは「建物(空間)=商品」です。ですから、メンテナンスしやすさや耐久性、機能性、コストはもちろん、商品としてのクオリティがどうかという点が重視されます。そうして、そのホテル独特の空間はつくられていくのです。私にとって、ホテル業の人のホテルにかける思いなどを垣間見ることはとても興味深かったです。ホテルがそのようにしてつくられているからこそ、住宅を「ホテルのようにしたい」と言われる方がいらっしゃるのだと思います。

休日のすごしかた
1日暇があるとミシンで縫い物、最近はいとこの赤ちゃん(3ヶ月)や1歳半の姪っ子と遊んでいます。

趣味
歌舞伎鑑賞、博多座は欠かさず見にいっています。
 
過去手がけた住宅のご紹介
住宅+仕事場 M邸
構造規模/ RC5階建て
家族構成/3世帯
夫婦(60代)+祖母(90代)
長男夫婦(30代)+子供1人(女の子)
次男夫婦(30代)+子供3人(男の子)

間取り/
夫婦(60代)+祖母(90代)宅→7LDK
玄関+キッチン+リビング+ダイニング+応接室+書斎+洋室2+和室3+納戸+浴室+トイレ
長男夫婦(30代)+子供1人(幼児・女)宅→5LDK
玄関+キッチン+リビング+ダイニング+洋室4+和室1+浴室+トイレ
次男夫婦(30代)+子供1人(幼児・女)宅→5LDK
玄関+キッチン+リビング+ダイニング+書斎+洋室4+和室1+浴室+トイレ
入居者のこだわりや要望
今回紹介する建物は、3世帯住宅で、かつ仕事場がいっしょになったものです。
また、このすまいにはなんと3世帯、4世代の方々が住むというめずらしいものでした。

同じ住宅にすむ家族とはいえ、3世帯それぞれの生活スタイルや好みは違ってきます。皆さんの要望を取り入れるため、各住居ごとに住まれる方の生活、要望を伺い、好みにあうようにご提案していきました。こちらのご家族は最初、具体的な要望をお持ちではなかったので、それぞれの家族構成やすまい方にあわせて間取りを提案しました。こちらからいろいろなことを提案し、決めていくにしたがって、ご家族がなにを重視かが見えてくるのです。


60代のご夫婦は奥様が植物や花がお好きで、すまいにもそういった要素をたくさん取り入れたい、という要望がありましたので、その一部をご紹介します。

バラの面格子
バルコニーや窓にはバラを模った面格子をつけましたが、既製品に気に入ったデザインのものがなく、デザインもおこして特注しましたので、世界で一つだけの面格子がつきました。今もそのおすまいのアクセントになっています。



お花のステンドグラス
かわいらしいお花のステンドグラスは奥様のお気に入り。綺麗な発色がお部屋に彩りを与えてくれます。このステンドグラスは室内のイメージに合わせて、作家の方にデザイン画を2種類つくってもらい、奥様がお好みの方を選ばれました。

草花をモチーフにした階段室
照明のピンクがかったやさしい光と、大胆に弧を描くグリーンの手すりは草花をモチーフにしました。

壁紙・インテリアについて
また、花がお好きな方なので、最初は家中の壁紙をお花模様と考えていらっしゃったようですが、寝室やリビングなどの長くいるお部屋は、シンプルはもののほうが落ち着きますよ、とご提案しました。
 「3階リビング」

逆に生活時間が短いトイレや脱衣所の壁紙は花柄に。華やかな壁がいっそう引き立ちます。好みの材質や仕様も、実際に使うときのことを考えてアドバイスします。

また、照明やカーテンなど、インテリアのご相談も受けたので、室内の雰囲気に合ったものをタイプ別にご提案。その中から気にいったものを選ばれました。壁紙や床材などを決めるときは、お持ちのインテリアや家具にあうものを提案するのが基本です。

キッチン
キッチンはみなさんご興味を持って、各住宅設備機器メーカーのショールームなど実際にご覧になったようです。ご自分の使い勝手がいいものを、それぞれ希望されました。やはり女性の方はキッチンにこだわる方が多いようです。
 
「キッチン」


設計で苦労した所や工夫した点など
こちらのお宅は、お仕事の場が同じ建物の中にあり、まずそちらを優先して間取りをとったので、住宅は水周りの位置等の影響上、いびつな形状にならざるを得ませんでした。その分、開口部を多くとるようにして、すまいが明るくなるように配慮を。難点も、違う側面での利点を引き出すように設計しています。

住宅と仕事場があるフロアは、色々な点で注意を払いました。
まず、靴の脱ぎ履きする場所。衛生上の問題でもありますので、動線を考え、最も適切な場所に設置しました。
次にセキュリティの面。会社からそのまますまいのゾーンに入りやすいと、防犯上問題があります。その為、会社とすまいのエントランス部分を離して、かつ不便にならないようなゾーン取りに神経を使いました。

 
住宅にかかわる仕事について
コーポラティブハウスの住戸設計をするにあたって
今まで自分が手がけてきたものは商業施設が中心でしたが、
より多くの住宅にたずさわりたいと思い、住戸設計者として参加いたします。

自由設計、戸建てと集合住宅の違い
戸建てと集合住宅ではもともとのつくりが違うので、自由設計ができるといっても、設備や仕様の制限がそれによって影響を受けます。たとえば、集合住宅ならエレベーターなどの設備、戸建てなら高断熱高気密、等です。
また、ご近所の方とのコミュニティ(共同体意識)なども大きく違いますので、戸建てと集合住宅では「すまいかたが違うもの」という捉え方のほうがいいかもしれません。

理想のすまいとは
「住み手の幸せを形にする」ので、一概には言えないと思いますが、住んでいる人と共に老化していき、味わいの出る建物はいいと思います。

建築家は、住む人のことを考えてすまいにいろいろな工夫を施します。住んではじめてわかる快適さがあるのです。住んでいる人に、「住んでみてよさがわかった」といわれると本当に“建築者冥利”に尽きます。

いいすまいを得るためのアドバイス
未来の家族のシーンを考えることが大切です。
現在→5年後→10年後〜の家族の構成や状況を考えると空間の使い方をイメージしやすいですよ。

設計者とは
すまいを設計者にオーダーするということは、何もないところからはじめるので、もちろん現物がありません。個人個人、同じライフスタイルの方はいないわけですから、すまいもたった一つのオーダーメイドになるのです。おおよそにおいて、好みや要望を活かすことが可能なのです。
モデルルームのようなものがないので不安をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、私たち住戸設計者の役目は、すまいづくりの面においてのコンサルタントとコーディネイトの仕事だと考えています。全面的に信頼してください、共に理想のすまいをつくりましょう!
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