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住戸設計者インタビュー 渋田 耕治さん

コーポラティブハウスの魅力的なメリットのひとつに「自由設計」があげられます。一戸ごとに担当の設計者がつき、組合員(入居者)の要望をとりいれ、理想のすまいをつくっていくのです。
こちらでは住戸設計者のご紹介をすると共に、過去の住宅設計において、施主の要望をどう活かしたか、実例をご案内します。
 
住戸設計者 PROFILE #06
渋田 耕治さん
KOUJI SHIBUTA

渋田建築計画事務所
[一級建築士]
http://www33.ocn.ne.jp/~koji2000/

主な設計プロフィール
オフィスビル、店舗、住宅等の基本計画、実施設計、設計監理 デザイン業務全般。

設計の仕事をしてる理由、はじめた理由
幼稚園のときにパラポラアンテナをマッチと木片でつくったことがあります。思えばその当時から構造物にものすごく興味をもっていたんだと思います。
また、小学校のときに福岡市天神にできた福岡銀行をみたとき、感動したのを覚えています。当時、福岡銀行には屋久杉が植栽されており、天神という街の真中に生い茂る大きな杉の木の存在が子ども心に不思議で、印象的に残っています。何かを創ることが好きで、当然の流れの様に建築の世界に入りました。

休日のすごしかた
友達と飲みに行ったり、食事に出かけたりしています。

趣味
ドライブ、現代美術鑑賞、建築探訪、スポーツ鑑賞、旅行。
 
過去手がけた住宅のご紹介
住宅 Cure+me house
構造規模/ RC造3階建て+ロフト
専有面積/73.65u
間取り/1LDK+店舗+ロフト+バルコニー
家族構成/夫婦(30代)+祖母(60代)+子(女:児童)
入居者のこだわりや要望
生活感のないすまい
1F店舗
階段
TOPライトで採光を確保(敷地が3箇所かこまれている)
将来的に変えられる
入り口2箇所
駐車場
中庭

今回紹介する建物ですが、この家の敷地面積は14坪。近頃雑誌なで紙面をにぎわしている、「狭小住宅」です。そして、お住まいになるご夫婦の職業は美容師。つまりこの住宅は、1階が美容室店舗、2階以降を居住空間というつくりが前提での設計でした。

>> 「間取り図」


建物外観
  DAY/NIGHT
まず、大きなポイントとして狭小地に立つ建物ということ、次に、店舗があるので、外見を含め、生活感のないすまいというのが必須課題でした。空間、採光をとるため3階建てにし、面積を食わない螺旋階段を採用しました。コンクリートを打ちっぱなしにした外壁と、採光をとるために大きく設けた窓、建物の通りに面して位置する螺旋階段の丸みを帯びた形状は特徴があり、施主の要望を活かせたと思っています。


採光
採光は壁面の大きな窓と、階段上のTOPライトです。敷地が3方向囲まれているのでなるべくたくさんの採光を効率よくとるために、スチールサッシの枠からすべて設計しました。外観ですが、まずの枠の目地が合うように。そして、デザイン的にも通常のサッシより幅を細くしてシャープに見せています。材質も通常のスチールでは合いませんのでこだわっています。また、将来の改築がしやすいようなつくりにしています。


長く住むことを考えて
リビングルームのフローリング材は、厚さ19mmのオーストラリア檜を使用。飽きがこない素地をいかしたものをシンプルに配しています。

将来、お子さんの居室が必要になることなどを考え、上階のロフト部分にもう一部屋つくれるようにしています。


設計で苦労した所や工夫した点など
最初からあった要望の内、「中庭」は美容室店舗内に配しましたが、駐車場はあきらめてもらいました。14坪の敷地の一階に店舗と住宅の入り口、そして駐車場をもうけるのはどうしても不可能でした。結果として、いくつかの部分をあきらめてもらうにいたりましたが、検討の末にムリだったことはオーナーも設計者も納得がいくものです。
 
住宅にかかわる仕事について
コーポラティブハウスの住戸設計をするにあたって
コーポラティブハウスは、住む人と共につくるすまいなので、
住む人の希望や、意見を直接すまいに反映させることができます。これは通常の分譲マンションだとできないことで、私はコーポラティブハウスのしくみにおもしろさを感じました。首都圏では密かなブームになっているコーポラティブハウス、まだまだ福岡では認知度が低いので、いろんな意味で時間がかかることが予測されます。しかし私は、コーポラティブハウスは住宅をつくる上での一つの理想のかたちだと考えているので、このプロジェクトに住戸設計者として携わる事を決めました。

自由設計、戸建てと集合住宅の違い
ライフスタイルの違う人が集まって住む集合住宅とは、人が、同じ時代の風潮や価値観などを共有し、分かち合うことだと思います。ある意味、同じ流れのなかで生活を共にするわけです。その中での自由設計とは、個人のライフスタイルの変化にあわせたもの、つまり自己表現だと考えています。

理想のすまいとは
住む本人が納得するすまいだと思います。すまいが人に与える影響は大きいので、住んでいて自分を確立できるようなすまいが理想的だと私は思います。

いいすまいを得るためのアドバイス
自分の希望をなるべくたくさん見出すことが大切です。街中のスポット、例えばカフェの照明の雰囲気やホテルのバスルーム、あるいはインテリア雑誌の切抜き、好みのものをたくさん見つけ、設計者にぶつけてください。その中で重要じゃないものを見極め、省いていきながら、徐々に自分のなかでどういうすまいが自分のスタイルにあっているかを見つけていけばいいのです。
すまいを取得するということは多額のお金をつかうので、とにかく後悔しないように、その時の希望を取り込むよう前向きに検討しましょう。

設計者とは
人によって大切なものは違うのでそれを取りまとめていくのが設計者の役目だと考えています。

 

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