■入居者のこだわりや要望
■奥様の生活するゾーンを効率よく
■家事を効率よくしたい
■キッチン周りのこだわり(設備や使い勝手など)
■家具が多い、実測して収まりよく設計に組み入れること
■バリアフリー
■お子様が独立した後の居室スペースの活用
この住宅は再開発ビル内の地権者のすまいです。他にも8戸ほどの地権者住宅を手がけましたが、中でも「2住戸を連結する」このオーナーの住宅は、面積的にも最大のもので、設備の集約や空間の分節等の試みができたことが、現在手掛けているタワーマンションのフリープランの実務にも活かされていると思います。
■室内のゾーンわけ
家族構成はご夫婦とお子さんが3人、年齢も20代と10代ということで各自居室もいります。住居を大きくゾーンわけすると、家族みんなが集う「パブリックゾーン」と各個人の個室が並ぶ「プライベートゾーン」に二分できます。
ただし、主寝室を含み、キッチン、洗面室、家事室は膝に不安を抱えた奥様の希望により近くに集約し、効率的な家事が可能なように計画しました。
■室内イメージ
こちらのご家族の特徴として、もともと蔵を所有されていたこともあり、たくさんの家具・調度品お持ちでした。それら一つ一つが歴史を物語る強い個性をもった物ばかりでしたので、それらが引立つように、内装はカバ材の白いフローリング×白木調の建具といったシンプルな色合いにつとめました。一部、造り付けの家具は桜材を使用し、時間とともに深みが出る、柔らかい木のイメージをすまいの要所に点在させ、住宅全体のイメージに統一感を持たせました。
■キッチン
パブリックゾーンの中心にあるキッチンは、奥様の強い要望により、メーカーを変更し対応しました。このようなケースはコーポラティブ住宅ではありがちですが、通常の分譲マンションではアフターの保証を考えてタブー視されています。嫌がる現場所長との交渉も、良い経験だったと今でこそ思えますが、当時は大変な思いをしました。
また、一般にキッチンの変更は追加工事費倍増の大きな原因であり、やはりここでも例外ではありませんでした。
結果的にキッチンは最優先の要望となり、予算に合わせて他の要望を見直し、金額の折り合いをつけました。
■子供室の利用
3人のお子さんのお部屋の利用ですが、壁を可動式にし、独立後はそれを移動させて、空間をフレキシブルに利用できるように提案しました。将来的にはお孫さんたちが集い賑わうとき、セカンドリビングとして使えるような一つの大部屋に変化できる。そんな工夫を盛り込んでいます。
■設計で苦労した所や工夫した点など
やはり苦労した点は、住宅設備の位置にある程度の制限がつくことです。通常の分譲マンションでのプラン変更でしたので、床の配管スペースに限界があり、排水竪管までの距離や、トイレの設置位置といった制限が大きくプランの骨格を左右します。
また、14階建で戸境壁が耐震壁であった為に、2住戸の連結とはいうものの一体的な間取りが不可能で、結果的に2つのゾーンに分けざるえなっかたというのが正直なところです。
もちろん、キッチンの位置などを、より効果的な位置へ配置することも可能でしたが、その場合は床に段差を設けなければなりませんでした。前述のように膝に不安を抱えた奥様のことを優先し、考えられる最良の場所に案を纏めてゆくことに要点をおきました。結果的に奥様には喜んでいただきました。
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