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住戸設計者インタビュー 谷口 遵さん

コーポラティブハウスの魅力的なメリットのひとつに「自由設計」があげられます。一戸ごとに担当の設計者がつき、組合員(入居者)の要望をとりいれ、理想のすまいをつくっていくのです。
こちらでは住戸設計者のご紹介をすると共に、過去の住宅設計において、施主の要望をどう活かしたか、実例をご案内します。
 
住戸設計者 PROFILE #01

谷口 遵さん
JUN TANIGUCHI

建築デザイン工房一級建築士事務所
[一級建築士]
http://www.jt-architects.com/

主な設計プロフィール
商業施設、医療施設、住宅等の設計監理。
インテリア、家具などのデザイン。

設計の仕事をしてる理由、はじめた理由
建築の仕事をしようと思ったきっかけは憶えていませんが、幼い頃から建築物にとても興味がありました。小学生のとき、建物を観るために大阪の万博に何度も行ったことを憶えています。明確な意識をもったのは中学生の時で、その頃はもう、「自分は将来、建築・設計の仕事をするのだ」という自覚がありました。

過去手がけた作品のなかで思い出深い作品
「連歌屋の通り抜け」という住宅は私の住宅設計に対する意識を大きく変えてくれた作品です。
それまで、私は施主に対して「自分のすまいに対して確立した希望」をもって欲しいと思っていました。施主の要望をすべて取り入れ、反映することで、完璧なすまいをつくりたかったのです。「連歌屋の通り抜け」の施主の方はその意味で理想の施主でしたが、同時に社寺などを専門とするやはり建築設計を仕事としている方でした。その仕事を通して、私の望みが無いものねだりに近いものであったこと、また同時に住宅設計という仕事の責任は重いものなのだな、と実感しました。

休日のすごしかた
犬の散歩、湧水汲み

趣味
テニス、温泉

 
過去手がけた住宅のご紹介

住宅 K−terrazza
構造規模/
  木造二階建て
専有面積/118.24u
間取り/
2F(玄関+リビングダイニング+キッチン+トイレ+洗濯室+ルーフテラス+デッキテラス1+デッキテラス2)
1F(洗面・脱衣室+浴室+トイレ+客間+寝室1+寝室2+寝室3+ウォークインクローゼット)
家族構成/
  夫婦(30代)+子(女児)

入居者のこだわりや要望
続き間の寝室(寝室は家族に一室でよい)
リビング・ダイニングを広くとりたい

このすまいは2階に玄関を配し、リビング・ダイニングなどのパブリックスペースを設けています。1階はプライベートスペース、寝室や浴室があります。大きな特徴として、1階の洗面室や浴室へは、それぞれの寝室や客間からのみアプローチできる、というめずらしい間取りになっています。
また、デッキテラスやルーフテラスが多く開放的なすまいです。

>> 「間取り図」

寝室
こちらのご主人は、「家族みんなで寝るので、寝室は一つでよい」と考えていらっしゃいました。(計画を始めたころはお子さんが小さく、家族で同じベッドで寝ていらっしゃったそうです。)
そこでご提案した間取りは、1室だけれど、引き戸で3室に仕切れる寝室です。お子さんが小さい間は一間で大きく空間を使えます。また、お子さんが成長し、個室が必要になった時など、場合に応じてフレキシブルな空間の利用ができるからです。


リビング・ダイニング
広い、開放感のあるリビング・ダイニングを、という要望はデッキテラスと一体感をもたせることでクリアしました。リビング・ダイニングの実際の広さは10畳ほどですが、南側に広いウッドデッキを配しており、それが床の延長に見え、実際の面積以上に広く感じます。気候がいいときは窓を開けて一体感を楽しむこともでき、本当に気持ちよいスペースとして活用できます。

また、北側にも腰高の窓を設けていますので、実際、光と風が抜ける、明るく開放感いっぱいのリビング・ダイニングになりました。


設計で苦労した所や工夫した点など

コスト
やはり予算面での調整は難しいところです。
ローコストということは、耐久性に直接反映することが多いので、全体を考えて素材選びや仕様をご提案します。安くても短期間でメンテナンスが必要なものだと、住んでからが大変だからです。
例えばこのすまいの床材はパイン材(ムク)のフローリングを採用しました。通常のフローリングの場合、傷がついて修繕する際は張り替えますが、昔ながらのムク材は、傷がついた表面を削ることできれいな床に修繕できます。節があることを許せば、費用も安く抑えることができるのです。
また、このすまいの屋根はやさしい弧を描いた特徴のある形状をしていますが、普通の屋根、天井と同じ材料をうまく組み合わせることで曲面を作り、コストを抑えました。値段と見栄え、メンテナンスのしやすさなどをふまえた上で、いろいろなご提案をしたいと思います。

建築の法令
建物を建てるときは、その敷地がある地域や、接している道路などからいろいろな制約が出てきます。おのずと建物を建てられる場所や高さが決まってくるのです。このすまいはその制約がきびしく、それをクリアしながらその空間を余すことのないすまいをつくることに気を使いました。

 
住宅にかかわる仕事について
コーポラティブハウスの住戸設計をするにあたって
私はコーポラティブハウスという住宅取得スタイルは、二世帯、三世帯住宅をさらに拡大させた10世帯、20世帯住宅という捉え方をしています。誰が住むかわからない無難なだけの集合住宅づくりではない、ということに興味を引かれて参加させて頂きました。福岡の方は全体的に住宅に対しての要望が希薄だと感じます。ですから、自由設計のできるコーポラティブハウスが通常の分譲マンションと違うものとして、一般の方から認識されるのは時間がかかるかもしれません。
今回の「仮称 西新コーポラティブハウス」が第一号プロジェクトですが、このプロジェクトが第2号、第3号となっていった時、
一般の方にどのように浸透していくか、また、どのようなニーズがあるのかをみていきたいと考えています。

戸建てと集合住宅の違い
集合住宅の場合、元々は知らない同士が集まって住むという前提のものなので、その制約がないといけませんが、それだけの違いだと思います。

理想のすまいとは
ライフステージによって部屋の用途は変わります。限られたスペースの中を上手に使いまわさなければいけません。ですから、使いまわししやすいすまいは長くすむこともでき、優れたすまいといえるでしょう。
また、お隣さんはどんな人か。とても重要なことです。すまいに対して、ある意味同じ方向性や感覚を持つ人が集まるコーポラティブハウスは、その点においてとても魅力的ですね。


いいすまいを得るためのアドバイス
家族でよく話し合うことが大切です。色々なものをみて、話し合ってください。それは、すまいの何が重要かについての意思疎通をはかること、家族内での意見をまとめることにつながります。また、思い入れに対する見直しもできます。「本当に自分達のすまいに何が必要なのだろうか?」しっかり家族で考えてみましょう。住宅をつくることは、それに自分がかかわらなければ味わえないことがたくさんありますよ。

設計者とは
一言でいえば、「すまいが上手に機能しているとき、一番うれしい人」です。住宅を設計する際、住みやすさや使い勝手を考えて設計しますが、それが住み手の生活にぴったりはまっているとき、とてもうれしく感じます。

 

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